7月26日(金)から27日(土)の2日間、2024年度の「福島復興支援 視察交流ツアー」を開催し、とやま生協の組合員と役職員、富山県生協連役員の計22名が福島を訪問しました。
このツアーは「東日本大震災を忘れない・風化させない」ために震災発生後の2012年から行われてきました。地震と津波、原子力災害の被害を受けた福島を訪れ、現地のみなさんと交流することで、福島は今どのような問題に直面しているかを知り、今後の支援についてを考えることが目的です。
今回も主に原発事故の影響が残る地域を周り、当時起こったことや被害の大きさを知り、福島の方々がどのような思いで復興を進めているかを学びました。
1日目(7月26日)
はじめに富岡町を訪問しました。富岡町は原発事故発生後、平成29年まで町の大部分が避難指示や居住制限の対象となりました。現在は町の一部を除いて避難指示が解除されていますが、避難が長く続いた影響で帰還した人は事故前の2割に留まっています。
福島の桜の名所として知られている「夜の森の桜並木」を散策しながら、原発事故で失われた人々の生活に思いを馳せました。
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春には「夜の森桜まつり」が開催される通りを散策
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更地になった中学校跡
次に東京電力福島第1原発の北側にある双葉町を訪れ、東日本大震災・原子力災害伝承館を見学しました。伝承館では、東京電力福島第1原発の建造から、震災と事故発生後までを振り返ることができます。
展示されている当時の映像や避難した人々が書いた記録、メッセージなどを見ながら、どのようなことが起こっていたのかを知り、家族や地域と離れて避難せざるを得なかった人々の想いを聴きました。
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東日本大震災・原子力災害伝承館の展示で、当時起こったことを振り返る
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当時を記録する資料や展示物
1日目の最後には、震災遺構浪江町請戸小学校を見学しました。請戸小学校は震災当時大きな津波に襲われましたが、全員が無事避難することができた学校です。
小学校を襲った津波の高さや、子どもたちが避難したという大平山までの距離を見て、参加者は「あんなに遠くまで逃げ切った子どもたちの頑張りや先生方の判断がすごい」と感心しながら、学校生活や津波の威力を物語るものがそのまま残っていることに驚いていました。
小学校の見学を終えたあと、この視察で現地を案内してくださったみやぎ生協・コープふくしまの宍戸さんから「請戸小学校のみんなが助かった話を聞いて考えてほしいのは、〝あなたにとっての大平山はどこですか?〟ということです。自分が住む地域で地震などの災害が発生した時、自分や家族はどこへ避難するのか考えてみてください」とお話がありました。
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津波の到達点を見上げる
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教室のあとを見つめる参加者
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当時起こったことや、震災前の小学校を振り返る展示室
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家々が立ち並んでいた小学校の周りはかさ上げ工事が進んでいますが、この地域に住宅を建てることはできなくなりました。
2日目(7月27日)
2日目は、相馬市の松川浦大橋を見に行きました。相馬市は福島県の中でも北寄りにあるため、東日本大震災の震源地に近く、10メートルを超える津波に襲われた地域です。
松川浦大橋のたもとから橋を見上げると、相馬市に押し寄せた津波の高さが実感できました。また、この地域では2021年、2022年に東日本大震災の余震と考えられる震度6以上の地震があり、東日本大震災のあとに復旧した歩道や建物が再び壊れてしまうなど、今も震災の影響が続いていることがわかりました。
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橋の車道のすぐ下の高さまで津波が押し寄せました。
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直近の地震で再び壊れてしまった場所があります。
次に松川浦大橋の近くにある相馬市伝承鎮魂祈念館を訪れました。鎮魂祈念館では、震災当時に撮影された津波の映像を見ることができました。ついさっき見学した松川浦大橋や漁港が、津波の泥水に呑み込まれていく映像を皆さんは息をのんで見ていました。
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相馬市を襲った津波の映像
映像を見たあとは、震災前後の航空写真を見比べながら、当時や現在の相馬市についてお話を聞きました。震災の後、海辺の集落があった場所は災害危険区域に指定されメガソーラーパネルが設置されたり、相馬市の人口が1万6千人以上減ってしまったりと、くらしに大きな影響があったそうです。
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津波に襲われる前後の相馬市についてお話を聞きました。
今回の視察では「買って支える」取組みの一つとして、「浜の駅 松川浦」でお買い物を楽しみました。
旬まっさかりの桃や、松川浦で養殖が盛んな海苔、そのほかの魚介やお菓子などを買い求め、福島特産のおいしいものをたくさん買うことができました。
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浜の駅 松川浦でお買いもの。福島特産の桃がだくさん並んでいました。
2日目の最後には、震災後に全村避難となった飯舘村の佐藤さんから、震災から13年経った今の想いをお聞きしました。
飯舘村の避難指示も解除となったものの、震災前の村にあった知人との気の置けない関係が変わってしまったことをお話しされました。村に戻っても以前の生活には戻れず、「さみしい、さみしい」と言って年配の方が亡くなっていくというお話とともに佐藤さんが語られた「賠償金で買えないものをたくさんなくした」という言葉がとても重く聞こえました。
その経験を踏まえ、佐藤さんは「福島の原発事故から学んでほしい」とおっしゃいました。
「原発事故は人災で、次の事故が起こらないようになんとかできる。みんなが笑っていられる世界にしたいから、原発事故を経験しておかしいと思ったことは、これからも伝えていきたい」
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飯舘村出身の佐藤さん「子どもたちには安全で平和な世界を残したい」
視察の行程をすべて終え、参加した皆さんからは「13年経っても復興は道半ば。テレビで見るのと違い、失われたものに実感が持てた」「元日の能登半島地震を経験して、今年こそ行かなければと思って参加した。震災の写真や映像を見るのは辛かったけど、私たちが次の世代に残せるのは安全と平和という佐藤さんの言葉を聞いて、前向きな気持ちになれた」など、それぞれ感想をいただきました。
今回の視察では、福島の中でも街の再建が進んだ場所、避難指示が解除されても復興が進まない場所など、大きな差が生まれていることが分かりました。原発事故の影響や地震の影響も続いており、町ごとに違う問題を抱えている場合もあれば、地域の再興という共通した問題もあります。
とやま生協では、これからも福島が抱える様々な問題と現地の皆さんの想いに寄り添い、復興支援を続けていきます。